こうさいぞめ
こうさいぞめ
虹彩染め
昔からの彩色技法の一つである「ぼかし染め」を、故 本郷寿基先生が戦後、研鑽と改良を重ね「虹」をイメージした新しいぼかし染めが先生の手によって開発され「大田子ぼかし」として発表されました。
大田子とは、京都の北に位置する杜若で名高い大田神社の氏子であるところから“大田の子”という意味で「大田子」と名付けられました。その技術を受け継ぎ五十年、独自の世界を創りあげたのが「虹彩染め」です。
改良に改良を重ねた何十種類にもおよぶ特殊な刷毛と、その刷毛運びの微妙なタッチ、そしてその色の含み具合により幻想的な色彩の世界が生まれます。この技術をベースに「ろうけつ染め」「型絵染め」「素描き」等の技法を駆使した訪問着は、地色の虹彩染めと様々な文様たちが相まって、お互いを生かしあい、絶妙のハーモニーを醸しだしています。
日本の精神である“和”の心が着物に宿り、着る人の人となりを優しく包み、調和となって内面の心の美しさを充分に引き出す上品な一品として、末永く愛されるものと確信いたします。日本の伝統文化の継承者として“物心一如”、どこまでも相手を生かしながら、こちらも生きる。着る人を輝かすことにより、その着物の価値が生まれる。そんな一体感で、心優しくなる着物を“21世紀のキモノ文化”として提案しつづけて行きたいと思っております。
松本 伸
京都松尾の小高い立地のアトリエ。ここで虹彩染めの着物は1つ1つ、松本の手によって生み出される。長年の作家活動から着物業界の移り変わりを見てきた中で、今の時代に相応しい着物の伝え方は何かと。
2015年の夏、琳派400年関連の振袖を作った時に感じた思い、若手クリエイターとの協業で見えた新たな可能性。決して上から目線ではなく、互いの技術を尊重し、自分だからできる技を投入することで、今までの製作工程で得なかった感動が生じる。
そして、自らも楽しんでいた。重ねてきた経験のなかに新たな切り口で彼らがスパイスを与えてくる。今までになかった価値観がそこに合った。
だから、見て欲しい。伝統と心地よい刺激から生み出されるモノづくり。
そして、この場所に染めを生業にしたアトリエと「染色家 松本 伸の技」と「道具」と「新たな挑戦」を。
染色家 松本 伸